若い世代では、親もとに住む未婚の世帯内単身者に増大した。その割合は、1980年から2005年にかけて、25~29歳では24%から41%、30~34歳では8%から25%に増え、年齢の高い35~39歳においても3%から16%に上がった(図3)。多くの世帯内単身者の経済状態は、不安定である。
低賃金であるがゆえに、親の家を出られない人たちが多い。親同居の未婚者は親の所得に「パラサイト」しているという見方がある。しかし、親の定退職と加齢によって、その収入は減るだろう。世帯内単身者の大半は、親の持家に住み、その居住の安定性は高い。しかし、老朽化する住宅の修復コストを負担できない世帯が増える可能性がある。
世帯内単身者の増大は、若年層の変化として注目されてきたが、その年齢は着実に上がってきている。今後は、経済力の不安定さに加え、老親の扶養・介護に関する問題状況が生じる可能性がある。(平山)
1970年代以降、日本においては離婚の増加が顕著である。子どものいる夫婦の離婚にともない、母子世帯の数が増大している。2011年度の全国母子世帯等調査によると、20歳未満の未婚の子と母親のみの世帯は123.8万世帯であり、2006年の115.1万世帯と比較して大きく増加した。
母子世帯を特徴づけるのは、その経済的基盤の弱さである。同調査によると、母子世帯の母親の就労収入は181万円と少なく、他の同居家族の収入等をあわせた世帯収入も223万円しかなかった。
母親ひとりでの子育てになるために、長時間の勤務ができないこと、労働市場から長期に離脱した経験があることなどの理由により、パートなどの非正規雇用を選択せざるを得ない母親が多いことがその背景にある。
低所得であることに加え、子育てと仕事の両立という課題を抱える母子世帯は、住宅問題に直面する可能性が高い。
著者らが独自に実施した調査によると、離婚後に母子世帯を形成した女性は、「公営住宅に入居できなかった」、「実家に戻りたかったが戻れなかった」、「家賃を滞納した」、「敷金や礼金、引越し費用などの一時金を用意できなかった」、「家主から入居を拒否された」などの多くの住宅問題を経験していた(図4)。
全国母子世帯等調査によると、母子世帯の住まいでは、民間借家などが最も多く約3割を占める。一般世帯では6割以上を占める持家率も、母子世帯では約3割と低い。また、公営住宅の割合が2割と比較的高いことも特徴である。多くの自治体では、公営住宅において、母子世帯の優先入居制度を設けている。
しかし、とくに利便性の高い地域では、公営住宅の応募倍率が極めて高く、円滑に入居できない場合が多い。また、公営住宅の立地の偏在から選択肢になり得ないことも多い。
さらに、自力で住まいを確保できず、居候の状態におかれている世帯が約1割存在していることも、注意すべきである。また、母子世帯を一時的に保護する母子生活支援施設などがあるが、施設の老朽化や地域偏在などが大きな課題となっている。(川田)
「こんなに働いているのに、ちっともラクにならないじゃないか~」
こんな悲鳴を、誰もが一度は上げたことがあることだろう。
だが、そんな愚痴めいた悲鳴ではなく、本当に心底、身体を酷使して働きながらも、所得が少なく生活が苦しい人、いや、苦しい女性たちが増えている。
「単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%」といったショッキングな見出しが新聞に踊ったのは、先週のこと。国立社会保障・人口問題研究所の分析で、勤労世代(20~64歳)の単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困」であることが分かった、と報じられたのである。
深刻な問題であるにもかかわらず、この問題を報じたのは朝日新聞だけだった(私が調べた限りではあるが……)。横並び報道が多い中、なぜこのニュースを報じたのが一紙だけだったのか、その理由は分からない。
特ダネ? そうだったのなら、「よく報じてくれた」と思う。
だが、実際はどうなのだろうか? こういう情報こそ、広く知らせる必要があるのに、広く報じられていないのは、なぜなのだろうか。
少なくとも、誰それが誰を批判したとか、選挙になりそうだとか何だとかいう情報よりも、大切なことだと思うのだが、マスコミにとってはあまり価値ある情報ではなかったのだろうか……。
広がる貧困の男女格差
いずれにしても、働く1人の日本人として、とても大切な情報だと思うので、改めて内容の詳細を紹介します。
2007年の国民生活基礎調査を基に、国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部の阿部彩部長が相対的貧困率を分析した結果、1人暮らしの女性世帯の貧困率は、勤労世代で32%、65歳以上では52%と過半数に及んでいることが明らかになった。
また、19歳以下の子供がいる母子世帯の貧困率は57%で、女性が家計を支える世帯に貧困が集中し、貧困者全体に女性が占める割合も57%と、1995年の集計より男女格差が広がっていた。
相対的貧困率とは、すべての国民を所得順に並べて、真ん中の人の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合を指す。厚生労働省では、相対的貧困率における貧困線を114万円、OECD(経済協力開発機構)の報告では、日本の貧困線は149万7500円と公表している。
ちなみに、2009年の全世帯の平均所得金額は、549万6000円。母子家庭は177万円程度が平均年収だとされている。
さて、これらの数字を見て、どのような感想を持つだろうか?
「また不安をあおるようなことばかり書きやがって。日本の貧困率が高いとか何とか言ったって、携帯を持っているような人たちは貧困とは言えないんじゃないの?」
そんなことを、正直、内心思った人もいるはずである。