東京地裁(石栗正子裁判長)は5月29日、改姓による不利益は一部認めつ つも、原告側の請求を棄却する判決を言い渡しました。
判決
http://www.asahi-net.or.jp/~dv3m-ymsk/13_5_29hanketu.pdf
夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反だとして国家賠償を求めた訴訟で、東京地裁は原告の訴えを全面的に退けた。
時代が変化する中で夫婦や家族の形態は多様化している。明治以来の結婚観を踏襲した今回の判決は釈然としない。
夫婦別姓をどう考えるべきか。個人の意思によって姓を自由に選択する可能性を含め、柔軟に議論を進めていく必要がある。
現状では、結婚すると夫婦いずれかの姓を名乗らなければならない。だが、改姓すると仕事や行政手続きなどで支障が出る場合がある。
姓を変えなくても済む事実婚を選べば、遺産相続や税制控除などで社会的に不利になる。
姓にはその人の歴史が刻まれていることを考えれば、結婚しても変更したくないと考える人がいても何ら不思議はない。
そうした人にとって夫婦同姓を強制されることは、個人の尊厳にもかかわる問題である。政府、国会は合憲判決に甘んじてはならない。
夫婦同姓は、決して日本古来の伝統ではない。原則、妻が夫の姓を名乗る同姓が導入されたのは、1898年(明治31年)に旧民法が成立してからのことだ。
戦後になって結婚時にどちらかの姓を選べるようになったが、それでも夫婦の約96%は妻が夫の姓に変更している。社会的慣習や周囲の無言の圧力があると言えよう。
判決は別姓を名乗る権利は憲法で保障されていないと指摘し、日本が批准した女性差別撤廃条約についても「別姓の権利を直接付与するものではない」と結論づけた。
一方で、判決は夫婦双方が希望すれば結婚前の姓を名乗れる選択的夫婦別姓制度を求める声は多いとの現状認識も示した。つまり、別姓を認める立法を否定したわけではない。
選択的夫婦別姓制度をめぐっては、法制審議会が1996年の民法改正要綱に盛り込んだ経緯がある。
自民党内などに別姓に対する反対論が根強く、国会への法案提出は見送られてきたが、あらためて議論の俎上(そじょう)に載せてもいいのではないか。
反対論の主流をなすのは「別姓では家族の一体感が損なわれる」との主張だ。しかし、家族の一体感と別姓とは、明らかに次元の異なる問題である。夫婦の姓が違っても家族の結びつきが弱まるわけではない。
今後、女性の社会参加はさらに進むだろう。婚姻や家族制度もこうした時代の要請に応えていかなければならない。
裁判の行方にかかわらず、政府、国会は民法や戸籍法の不断の見直しが欠かせない。(北海道新聞)
婚姻による姓の変動――民法と戸籍の関係から
Du Changement de Prénom par Mariage
吉田 信一
YOSHIDA Shin-ichi
http://www.tuins.ac.jp/library/pdf/2010kokusai-PDF/2010-07yoshida.pdf
富山国際大学国際教養学部紀要 第6巻 (2010.3)
戸籍がつくる差別
著者:佐藤文明(さとう ぶんめい) 現代書館
『日本女性史』井上清(三一書房 1948年)
夫婦別姓の法律学 http://www31.ocn.ne.jp/~eighsaqu/shoseki-2.htm
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