『引き継ぐもの―大和秀雄さん追悼集―』  送料込み1部600円

ご希望の方は、「大和秀雄さん追悼集希望」と明記の上、郵便振替00770-7-46251 加入者名:平和をつくる富山県連絡会宛てにお申し込み下さい。
【目次】
 僕が今まで歩んできた道
 カラー写真 アルバムから
第一部 差別からの解放と自立を求めて―大和さんの生涯
    生い立ち―大和さんの聞き取りから
    平井誠一さんに聞く 施設から地域へ 

   ―「障がい者」解放運動を共に闘って
    あらゆる差別に反対し、平和運動の先頭に
        大和さんと「平和をつくる富山県連絡会」の思い出 村山和弘
第二部 大和秀雄さんを偲んで 全国、富山の仲間から


大和さんの遺稿

平和をつくる富山県連絡会 ニュース41号(2010年1月号)より転載

 

部落・「在日」・被爆   大和秀雄

 

 長野県で起きた結婚差別事件にたいして、たくさんの方から、Aくんへの激励が寄せられました。被害者のAくんとその家族は、支援者とともに二度にわたって確認会を行いましたが、B家族は、発言自体を否定し、三回目以降の確認会の出席を拒否し、部落差別を居直っています。

「家柄が悪い」=部落差別
 B家族がAくんに対して「ウチは家柄だから」と言ったことは、「あんたの家とは違って家柄がいい」という意味です。これは部落差別そのものです。これまでも「家柄」「出身」「血筋」という侮蔑の言葉をあびせされ、結婚差別のショックで命をなくした人がたくさんいます。富山でもありました。結婚や就職から排除されつづけている部落差別の現実に怒りでいっぱいです。
 富山で集めた「長野結婚差別事件を許さない」激励は、Aくんと両親に届けました。署名を寄せてくださった方から、「今時、こんなことがあるなんて信じられない」と驚きの手紙がありました。しかし、私にとっては富山でも部落差別は日常なのです。「こんな差別は許せない」と闘い続けている Aくんと家族とともに、差別の無い社会のために闘いたいと思います。

 去年、身近で政治活動をしている人が、いかにも「左翼的」な言葉で「同和住宅闘争は物取り主義」という党派言いなりの発言をしました。そこには、部落民が生きるために必死で勝ち取ってきた「同和住宅」の歴史も知らない無知と傲慢があります。部落差別は単なる封建遺制ではありません。時の権力によって意図的につくられ、継続しているものなのです。藤野先生の講演で学んできました。
 そこで、今回は、広島市福島町の歴史を見ていきたいと思います。

 

 差別ゆえの被爆
 1945年8月6日、広島に原爆が投下されました。広島市内にある被差別部落は、爆心地より1.7~2.5kmの距離に位置し、6037人が被爆しました。家屋はほとんど焼失し、残留放射能を浴びた結果、2km以上では他地域にはない急性原爆症の死者は約1000人、死亡率は約33%となり、広島市全体の1.5~2.5kmの死亡率13.4%の約2.5倍となっています。広島市内の小学校高学年はほとんど集団疎開をしていましたが、被差別部落では300人以上いた児童のうち、たった30人しか疎開できず、疎開していれば助かった多くの児童が死亡しています。さらに被爆直後、県内最大の都市部落・福島町や南三篠町の住民は、家を焼かれても、差別により市外に出ることはできませんでした。軍隊が夜も高張り提灯をつけて町内に駐屯し、監視しました。そして、やっと避難した人も、出身がわかると相手の態度が急変し、多くの人が次の日までに帰らざるを得ず、その結果、多量の残留放射能を受けることになったのです。
 
太田川の改修工事に伴う追い出し攻撃
 戦後、広島市の復興が進んでいくのですが、福島町など被差別部落だけ取り残されます。広島市を流れる太田川の改修・治水工事のために、市は何の補償もなく住民たちを立ち退かせ地域を川底に沈めようとしました。全国的に同じようなことがおこりました。
 国や市に対して差別撤廃と住環境の改善を求めてムラぐるみの闘いが行われました。福島町では鍋釜を持ったお年寄りや、子どもをおぶった婦人、そして仕事を終えた男の人たちが、夜を徹して市役所前に座り込みました。さらに、改修工事に使うトロッコの前に座り込み、命がけの闘いでこの工事を阻止しました。
 こうした運動によって、ようやく国と市はいわゆるスクラップアンドビルドの手法で地域の住環境改善と住宅建設にとりかかりました。同和住宅の建設には、その前提として、そこに住んでいる住民による家屋の立ち退きや土地の提供がありました。住民たちは、「これで地域がよくなるなら。差別がなくなるのなら」と代々引き継いできた土地や家をただ同然で提供したのです。そうして初めて同和住宅が建設されました。
 しかし、建てられた住宅はあまりにもひどいものでした。洗面所がなくて子どもが学校に行く前に顔も洗えない、お風呂やトイレも共同、木材などの材料全てが古材の使い回し、柱は半分の太さ・・というものでした。
 しかし、こうして勝ち取った同和住宅も、現在は、「もう部落差別はない」と高額の家賃値上げと追い出しの攻撃がかけられています。差別と闘い、生きるために最も大切な住宅を獲得する闘いを「物取り主義」と批判することが、いかに部落差別であるのか、わかってもらえたと思います。

「町の東側に5メートルくらいのドブ川があったでしょう。あれがいわゆる“差別の川”ですよ」部落解放同盟の役職を務めている菊島章吾(39歳)が語る。「もと福島川と言った広い川を、都市計画で埋め立てる時、隣の町から反対が起りましてね。福島と地続きになっては地価が下る、福島の人間がおしかけてきてこちらの町民に不安を与える、そんな訴えで当局をつきあげたもんだから、とうとう、川の一部がああして残されることになったんです。身分差別はきはされた形であっても、このような行政上の差別や、教育・就職・結婚、それから人間評価の面での差別は、はっきり続いてますね」・・(『福島町』 多地 映一 著)

 広島の被爆を考えるとき、強制連行され、強制労働させられた2万人もの死者を出した朝鮮人の問題があります。これは不二越企業への強制連行問題とも通じています。広島の朝鮮人被爆問題と、福島町の被爆「在日」と部落民について、次回続けて考えたいと思います。

 

毎週水曜日12時~北陸電力前 ランチタイムアピールやってます!! 

支援物資・カンパ募集

福島の仮設住宅に支援物資を送ります。米・野菜や日常品、カンパ募集しています。

6月23日(金)12時から富山東別院会館前

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