「6月18日、災害廃棄物受け入れ」発表に抗議し撤回を求めます
岩手県の広域処理は法令違反、住民監査意見・書証追加 記者会見
池多の未来を守る会
1. 25年度岩手県内処理を半減させて広域処理を維持。重大な法令違反!
(1) 「岩手県災害廃棄物処理詳細計画第二次(平成25年度)改訂版」で明らかになった事実
「岩手県災害廃棄物処理詳細計画第二次(平成25年度)改訂版」によれば、山田町の可燃物は、岩手県内4箇所の処理施設を前年度(平成24年度)の実績で稼働すれば、広域処理をしなくても、岩手県内で処理が十分可能であることが明らかとなりました。あえて富山県で受け入れる必要性はありません。
資料編p34 図-4.6 可燃物処理フロー
山田町は、岩手県内の雫石・滝沢環境組合清掃センター、盛岡市クリーンセンター、宮古清掃センター、仮設焼却炉の4ヶ所です。そのうちの3箇所では9月に終了予定です。
資料 p34表-4.3.1(2)
施設別の処理の進め方 一般廃棄物焼却施設 (沿岸被災市町村内)
平成24年度実績 平成25年度計画処理量(9月)
①宮古清掃センター 山田町 2.000 → 1.100 -900
p35 表-4.3.1(3)
②雫石・滝沢環境組合 平成24年度実績 平成25年度(9月)
清掃センター 山田町 2.000 → 1.300 -700
③盛岡市 平成24年度実績 平成25年度(9月)
クリーンセンター 山田町 3.100 → 1.600 -1500
p35表-4.3.1(4) 施設別の処理の進め方 仮設焼却施設
平成24年度 平成25年度(H26年2月)
④仮設焼却炉 山田町 10.100 → 5.000 - 5100
-8,200トン
広域処理にあたっての原則は、あくまでも地元処理が前提であり、岩手県の基本方針や内閣府の特別機関である学術会議でも繰り返し確認されています。
それなのに、今から富山県で処理するのは廃棄物処理法第6条の2、特別措置法・政令215号の広域処理の原則に違反しています。
(2) 岩手県 がれきの量を非公開!!
私たちは、5月30日、富山地区広域圏事務組合に再監査請求しましたが、その中で岩手県がガレキのデータの自治体名と数量のほとんど全量を墨塗りしていることを問題にし、富山地区広域圏事務組合が岩手県に直接確認するよう求めました。
この墨塗りの問題にについては、岩手県の住民が情報公開請求を行っていましたが、岩手県は非開示という対応を取りました。それに対し、岩手県住民は異議申し立てを行い、審査会に諮問され、明日6月12日、第一回の答弁書が提出されます。
この間、岩手県は、広域処理の前提となるガレキの正確な量を公表することができないという実態が明らかとなってきました。
(3) 復興予算の流用問題、会計検査委員が審査を開始
住民監査請求で、富山県での広域処理は復興予算の流用になると、補助金等適正化法違反となると指摘しました。復興予算「がれき検討」だけで244億円に上っており、そのうち70億円以上は上乗せ交付だった問題で、会計検査院は6月中に環境省と7都道府県10箇所の自治体の検査に入る方針です。本来、被災地の復興のために使われなければならない予算を流用すれば、被災地にお金が回らなくなり復興の足を引っ張ることになります。
(会計検査院法では調査の結果31条で担当職員の懲戒処分を求めたり、33条で検察への訴えも規定されています。)本日6月11日、326政府交渉ネットが「がれきの広域化に関連する復興資金の流用問題に関して」会計検査院への情報提供と要望を行う予定です。
2. 地元合意なき受け入れ発表は富山地区広域圏の焦りの現れ
(1) 5月24日、富山市が山本町内会役員への説明会を行いました。そこで、富山市は、震災がれき焼却灰の埋め立てに関する確認書の案を提示し、6月下旬までに山本町内会と締結したいと要請しました。その場では、町内会3役に案の検討を一任することになりました。
池多住民全体に賛否も問わず、確認書を交わすことは許せません。
住民自治の重大な問題です。6月9日、池多の未来を守る会は、町内会役員宛に「確認書を絶対に締結しないよう」要望書を提出しました。
(2) 富山県は6月3日に岩手県と災害廃棄物の処理に関する基本協定書を結び、6月7日に契約しました。そのため、わずか4日後の6月7日、富山市は急遽池多住民への形だけの「報告会」を開催しました。池多住民の多くは「報告会」開催を直前に知ったか、知らさていません。住民への説明会ではなく、受け入れを前提にした富山市の一方的な通告です。しかも、会場は池多ではなく、参加者が限定される山本公民館とし、最初から住民が参加できないようにしました。富山市の住民に対する誠意は微塵も感じられません!!
既成事実を積み上げ、町内会も含め地元住民を無視して強行する、富山市側の姿勢に怒りの声があがっています。
新たに富山地区広域圏が受け入れる理由は、「行政が一旦決めた事は何が何でもやる」という面子しかありません。既に広域処理するガレキはなく、復興予算の流用が社会的問題となっている中で、「受け入れた」というアリバイ作りであり、富山市の焦りを示しています。
まとめ
平成25年5月に発表された「岩手県災害廃棄物処理詳細計画第二次(平成25年度)改訂版」は、岩手県内処理を減らして富山で広域処理をしようとしていることを示す公文書です。富山地区広域圏事務組合に対し、追加意見と書証を提出(6月13日)します。
このように、地元住民の合意もなく、法令違反に加担する受け入れを決定した富山県と富山市、富山地区広域圏事務組合に対して強く抗議し、撤回を求める要請文を提出します。災害廃棄物の広域処理が終了しても、焼却灰は永久にこの地に残ります。住民を無視して強行するならば、石井隆一富山県知事と森雅志富山市長が責任を取るまで追及し、闘い続けます。
関連資料 1 岩手県 処理の基本方針(実行計画)→平成23年から毎年同じ文面
関連資料 2 平成24年4月9日 日 本 学 術 会 議 東日本大震災復興支援委員会
日本学術会議とは、内閣府の特別機関のひとつ。この提言は、日本学術会議東日本大震災復興支援委員会の審議結果を取りまとめ公表するものである。以下引用
3 広域処理を行うに当たって特に留意すべきこと
① 県内処理が原則であることを重視する
国は、県内処理を行えないものを広域処理するという原則を重視し、まず広域処理ありきの姿勢にならないよう留意する。特に、高度な選別技術の適用等により、焼却や埋立ての対象となる廃棄物の量を減らして迅速な処理を図り、かつ可能な限り多くの災害廃棄物を県内で再利用するための工夫が求められる。県内での防災林や高台の盛土等の防災施設への利用は有用な活用手段であり積極的に進めるべきである。
② 災害廃棄物量のより正確な把握に努める
現在用いられている各地の災害廃棄物量は概算値であり、今後、処理作業と並行し
て、廃棄物の種類別存在量をより正確に把握することが必要である。それにより、県
内処理計画、並びに災害廃棄物処理計画全体の緻密化を図ることができる。広域処理希望量は今後の処理計画緻密化により県内での再利用や処理処分の割合を高めることができれば、広域処理はより限定されたものになり得る。また一方、広域処理もより現実に即した計画に基づき進めることができる。
③ 受入自治体の住民に対して情報公開を徹底し説明責任を果たす
国は、災害廃棄物に放射性物質、アスベストその他の有害物質が含まれている可能性があることも踏まえ、以下を行う必要がある。すなわち、1)受入自治体が、住民と十分なリスクコミニケーションが取れるよう、災害廃棄物の分別方針、放射性物質その他の有害物質濃度の測定方法とその結果をはじめとする関連情報を全面的に開示すること、2)線量測定をはじめとする含有物測定に関する技術的支援を行うこと、3)中立的研究者による工程点検の機会を保証すること等である。2.で述べたように、現行の処理手順に従う限り、放射性物質の混入に伴う健康への影響は小さいと考えられるが、受入自治体の住民がその内容を正確に把握し、安心して生活できるよう、しっかりと説明責任を果たす必要がある。
④ 放射性物質の漏出に関するモニタリングを継続する
国及び受入自治体は、焼却施設や埋立施設からの放射性物質の再放出(漏出)に関するモニタリングを継続し、そのデータを公開するとともに、基準を超える濃度のそのデータを公開するとともに、基準を超える濃度の混入や焼却灰の濃度が高くなった場合に、特措法に基づく基準に則った管理を迅速に行えるよう、予めその方法を確立しておく必要がある。
広域処理に関する法令
廃棄物処理法 第6の2自治体の処理責任、同法 第4条の33 再委託の禁止
政令215号 、地方自治法252条の14
補助金等適正化法 第6条
富山県知事 石井隆一 殿
抗議文
住民を完全無視した「6月18日災害廃棄物の持ち込み決定」に
強く抗議し、撤回を求めます
私達、池多の未来を守る会は、昨年11月から富山県や富山市に対し、有害物質汚染ガレキの受け入れ中止を求めてきました。さらに住民監査請求等で再三にわたり、広域処理は違法であり、被災地の支援ではないと主張してきました。
その主張通り、「岩手県災害廃棄物処理詳細計画第二次(平成25年度)改訂版」の発表で、富山県への広域処理へ廃棄物を回す為に、県内処理を大幅に削減していることが明らかになりました。これは被災自治体で処理ができない分を広域処理するという原則に違反しており、違法です。
また、復興予算の流用問題では、交付額が244億円に上っており、このうち70億円以上は通常なら自治体負担になるものを全額補填した上乗せ交付だった問題で、会計検査院が自治体の検査に着手、6月中に環境省に検査に入る方針です。
広域処理は既に破綻し、広域処理自体が問題視されている中で、新たに富山地区広域圏事務組合が受け入れを決定したことは、全国的に重大な問題です。
既成事実を積み上げて、住民を無視し強行突破するのは、富山県と富山市の焦りとしか言えず、既に破綻した広域処理に最後までしがみつく姿は、全国に醜態を晒します!!
岩手県の災害廃棄物量が(富山県知事の言う)多少の誤差では済まされない量であることが明らかとなった今、富山県と富山市は速やかに広域処理の決定を撤回して下さい。
住民を無視して強行するならば、石井隆一富山県知事と森雅志富山市長が責任を取るまで追及し、闘い続けます。
以上
2013年6月11日
池多の自然環境・生活環境と池多の子どもの未来を守る親の会
代表 中山郁子